エアコン真空引き問題

エアコン真空引き問題について、以前から考えていることをまとめておく。

  • エアコンメーカの設置手順書に書かれている基準時間(XX分以上真空引きすること)について解説が全然ないため、業者が守ろうとしない。
  • 真空ポンプの性能がバラバラなので、メーカの設置手順書に書かれている基準時間(XX分)が妥当な線引きになっていない。
  • 本来は真空度が重要なのに、真空度を測る手段は業者任せで業者の手持ち機器に依存している。
  • 本来は、エアコンメーカが圧力計(真空計)を標準でつけていれば、ユーザが施工を管理しようと思えば管理可能である。
  • エアコンメーカが圧力計をつけないので、業者のゲージ・業者の真空ポンプでお願いせざるを得ず、基準時間実施してくれと言っても業者の言い分は「YY分以上やってももう意味ないんですよ」となり、ユーザによる施工管理が困難となる。
  • 設置・移設時にしか稼働しないゲージなんて無駄ですよというのであれば、メーカで校正したゲージを購入時にセットでつけておいて返送時返金方式にするなど、やりようがあるはず。
  • メーカとしては、カタログスペックを謳えればそれでよくて、施工にバラつきがあっても実害がないから、対策しないのであろう。

以上のような理由でエアコンの設置工事・移設工事の品質はバラバラである。
その結果として、何が起きるかというと、十分な真空引きがなされなかった場合には、冷媒に空気がまざる量が増え、性能が低下する。
この性能低下は、部屋が冷えなくなるというのではなく、部屋を冷やすのにかかる電気代が増えるというものなので、かなりの性能低下が起きないと、可視化されない。
これも大きな問題である。

  • エアコンの効率を測定する方法が用意されていない。
  • したがって、低品質な工事により損害を被っていることにユーザが気付くのは困難である。

これらの問題点を解決する方法としては以下のようなものが考えられる。

  • 施工管理:毎回、基準時間/基準圧力の厳守を、契約時に念押し確認する。・・・ただし、これは業者の多重構造から、困難を伴う。引っ越し業者との契約時にこれを念押ししても、実際に施工する人間までの間に、引っ越し業者の電気工事部門、そこから依頼を受けた工事業者1、工事業者2、といった形で何ステップか踏んでの施工となるため、必ずしも契約内容は遵守されず、現場で揉めることとなる。
  • 効率確認:ワットチェッカーなどでエアコンの効率の確認を行う。・・・単に消費電力を確認していくだけでも、明らかな異常値は確認可能であろう。
  • 効率確認:真面目にやるのであれば、夜間に、外気温に対する温度差をa℃にして室温が静定するまでの冷暖房稼働時の消費電力を確認する。夜間に実施するのは、太陽光の影響を排除するため。これは部屋の保温性能と複合のチェックになるが、温度差aを小さく設定すれば保温性能はさほど問題にはならないだろう。
  • 施工を自分で行う。これはなかなか良い選択肢だと思う。最近では施工に必要な道具を有料で貸し出す商売も行われているようだ。http://making.ti-da.net/e4206722.htmlただし物理的・工学的な素養がそれなりに必要となりそう。
  • 床置きエアコン、窓用エアコン:これらエアコンは、通常のエアコン(壁掛けエアコン)の室内機・室外機が一体となった製品であり、設置・取り外しに際して真空引きの問題が発生しない製品であるから、上記のような問題点を根本的に解消している。一方、問題点としては、その構造上、そもそも最初から壁掛けエアコンに比べて効率が悪いことが挙げられる。

平均的な施工業者は1回の工事でどれだけエアコンの効率を悪化させるのか、床置き/窓用エアコンの効率は実質どの程度なのか、壁掛けエアコンを平均的な施工レベルで何度移設したら床置き/窓用エアコンと同程度の効率に落ちてしまうのか、けっこう興味深いデータになると思うのだが、エアコンメーカあたりがデータ取ってくれないだろうか。