動物が知的っぽい行動してても本当に知的なことやってるかどうかはわからんよ。

という話を授業でやってて非常に面白かった。
ハトが色を伝える会話をしてるよ!すごい!っていう話なのだ。*1

それを確かめるため、ある実験がなされた。その詳細を説明しよう。
壁で仕切った二つの部屋にハトを1羽ずつ入れ、まずハトAが緑か赤のランプを見て、それからハトBが左か右のキーをつつく。緑なら左、赤なら右をつつけば正解、2羽ともに餌が出てくる。逆をつつくと餌は出ない。もちろん壁で仕切られているのでハトBにはランプもハトAも見えない。

さて、この環境に何も知らないハト2羽を放置しておくとどうなるか。なんと、ちゃあんと正しい方のみつつくようになるのである。しかも特定のハトだけでなく、何も知らないハトに入れ替えながら実験を繰り返してもどのペアもこれができるようになる。ハトは色の情報をどうにかして伝えることができるんだね!すごいね!…と、読者の皆さんも思っただろうか?

ところが、実験中のビデオをよくよく観察してみると、実はハトの行動の推移は次の通りだったのだ。
ハトB:とりあえず、右のキーだけつつく。(これは個体によって、右だけだったり左だけだったりする)
ハトA:うーん、どうやら赤ランプがつくときだけ餌が出てくるようだなあ。あっ、赤ランプがついた!餌がくるぞ!餌がくるぞ!(さわぐ)
ハトB:うーん、どうやら隣が騒がしい時は餌が出てきて、隣が静かな時は餌が出ないようだ。ちょっと隣が静かな時は左をつついてみるか。おっ?隣が静かな時は左をつつくといいんだな。さわいだら右、静かなら左だ!
ハトA:んん??今度はどっちの色でも餌がくるようになったみたいだなあ。おっ、緑ランプだ。餌がくるぞ!餌がくるぞ!(緑ランプでもさわぐようになる)
ハトB:隣がさわいでるので右をつつく。
ハトA:あれ?餌がこない…。緑ランプのときは、さわぐと餌がこなくて静かにしてると出てくるんだな。赤ランプの時はさわいで、緑ランプの時は静かにしよう。よーし。
という具合。ハト間の会話なんてなくて、互いにバラバラの試行錯誤をしているだけじゃん!

動物が複雑な行動をしていて、人間が「ああ、自分たちと同じように知的な行動をしているな」なんて思うときでも、必ずしもそうとは限らない。この例では試行錯誤の過程を読み取れるから、ああ実は単純な原理で行動していたんだね、と分かるが、判別のつかない例だって当然考えられる。これをすごく複雑な行動に拡大して考えると、人間を機械で再現できるか?とか哲学的ゾンビとかって話の判断の助けになるよね。

ってことらしい。

*1:元はイルカが会話してる!すごい!ってTV番組で、じゃあハトもしてるんじゃね?って実験がなされた